2006年から月刊「Gファンタジー」(スクウェアエニックス刊)にて好評連載中のダークファンタジー作品『黒執事』。2008年からテレビアニメ化され、多くのファンを魅了してきました。今回は、モフフサと大人気作品『黒執事』のコラボ発売を記念し、2024年の『黒執事 -寄宿学校編-』 、そして現在放送中の『黒執事 -緑の魔女編-』監督の岡田堅二朗さんにインタビューを受けていただきました。
プロフィール
アニメ監督・演出家 岡田堅二朗さん 2016年、アニメ「3月のライオン」ではシリーズディレクターを担当し、繊細な世界観を映像に落とし込んだ演出で一躍話題となった。2024年『黒執事 -寄宿学校編-』、2025年『黒執事 -緑の魔女編-』で監督を務める。 『黒執事 -緑の魔女編-』 https://www.kuroshitsuji.tv/emeraldwitch/ |
アクション要素満載の『緑の魔女編』は、「動」の作品
――2024年のTVシリーズ『寄宿学校編』を終えて、作品の反響はいかがでしたか?
岡田さん:驚いたのは、海外のファンが想像以上に多いということでした。ロサンゼルスで開催された北米最大級のアニメフェス「Anime Expo 2024」に参加した際に『緑の魔女編』の放送決定を告知する映像を公開したんですが、会場のお客さんの歓声や拍手がすごかったです。『寄宿学校編』の初報を2023年の同イベントで解禁した際も会場の雰囲気は同様で、SNSでも各国のトレンドに入っていたと聞きました。
緻密な世界観やストーリーなどの『黒執事』という作品が持つ魅力が、海外のアニメファンにもしっかり伝わっていて今の人気に繋がっているんだなと改めて感じました。
――『黒執事』は19世紀の英国を舞台にした作品ということで、世界観を伝えるため作画などにもこだわったと聞いています。
岡田さん:作品の熱量を伝えるため、『寄宿学校編』に登場する小物や背景にはこだわりました。執事のセバスチャンが紅茶を注ぐシーンでは、ティーカップのデザインや質感にも気を配りました。
また、物語の舞台となる名門寄宿学校・ウェストン校のきらびやかで優雅な世界観を伝える絵作りのため、実際にイギリスまでロケハンに行き写真をたくさん撮ってきました。4つの寮の監督生(プリーフェクト)が初登場する中庭の噴水シーンや、校長室や礼拝堂といった様々な校内のシーンは、ロケハン写真の構図を参考にして映像に落とし込んでいます。
――『緑の魔女編』は、呪いや魔女、人狼といったホラー要素満点の世界観が特徴ですが、見どころについて教えてください。
岡田さん:『寄宿学校編』は、英国が舞台のきらびやかな貴族の世界観でしたが、『緑の魔女編』はドイツが舞台でダークホラー要素が強いですね。
キャラクターのアクション要素などスペクタクルなシーンが増えていて、エンタメとして、前エピソードとまったく違った楽しみ方ができる作品になっています。『黒執事』における『寄宿学校編』が「静」のストーリーだとしたら、『緑の魔女編』は「動」という感じですね。
――演出面においては、どのようなポイントにこだわっているのでしょうか?
岡田さん:原作のダークファンタジーな世界観がメインに描かれるシリーズなので、いかにその雰囲気をアニメーションとして落とし込むかというところに注力しました。
森にひっそりと佇む怪しげな洋館の雰囲気や、ロウソクや松明といった灯りによって照らされて生まれる陰影、森の中で濃い霧がキャラクターを包むといったシーンなどがあります。演出としてリアルな表現を描く場面とファンタジーのような不可思議な場面が両方あり、その境界をさまようような世界観になっています。
ファンを魅力するのは、枢先生が描く世界観とキャラ設定の奥深さ
――新たなキャラ「ジークリンデ・サリヴァン」「ヴォルフラム」が今作で登場します。この2人のキャラクターの魅力や見どころのシーンについて教えてください。
岡田さん:「狼の谷」(ヴォルフス・シュルト)の若き領主として登場するジークリンデ・サリヴァンは、子どもとしての幼い部分や未熟なところがありますが、領主としての威厳や気高さを持っているキャラなので、彼女の多面性や人間的な成長にぜひ注目してもらえたらと思います。
ヴォルフラムはサリヴァンに仕える執事ですが、少し不器用で、精神的なもろさが垣間見えるシーンもあります。人間離れした能力があり完璧な執事であるセバスチャンと真逆のキャラですが、その“人間くさい”ところが彼の魅力かなと思います。
サリヴァンとヴォルフラムは、シエルとセバスチャンと対比するような位置付けですが、物語が進むにつれて2組の関係性がどう変化するのかといったドラマも見どころです。
また、セバスチャンとシエルの関係においても、本作では大きな展開があるのでそこもぜひ楽しみにしてほしいですね。
――ありがとうございます。本作品が、多くの人を魅了する理由は何だと思われますか?
岡田さん:枢先生が描かれる緻密な世界だと思います。画力の高さは言うまでもないですが、キャラクターの衣装、街並みや背景、食器や小物に至るまで、世界観を伝える設定をしっかり研究されて表現されている点がファンを魅了するのではないでしょうか。
キャラクターの表情や仕草も、細部にまでこだわりを感じますし、信念や美学を持っているキャラクターの生き様が、ファンの心をつかむんだと思います。
そんな作者の情熱を、私たちアニメ制作サイドも理解してアウトプットすることが大事だと思っていて。作風を忠実に再現するように、『寄宿学校編』では、原作と同様に時代考証の専門家も入れて制作しました。そうして完成したアニメシリーズを通して、私たちが感じた原作の魅力まで多くのファンに感じ取ってもらえたらといいなと思います。
――岡田監督をはじめ、多くの制作スタッフが作品と向き合ってこられたから『寄宿学校編』の成功につながったんですね。もし黒執事のキャラクターが現実世界にいたとしたら、誰に会ってどんな話をしてみたいですか?
岡田さん:そうですね~。悩みますが、会えるとしたらタナカさんでしょうか。人生についていろいろ教訓を学びたいです(笑)。優しく、タメになることを言ってくれて、ちょっと背中を押してもらえそうじゃないですか?
こだわりと情熱が詰まったモフフサのクオリティに感動
――モフフサシリーズとして初となる「黒執事」とのコラボが発売されました。実際に手に取ってみて、いかがですか?
岡田さん:すごくかわいいですね! セバスチャン、シエル、葬儀屋の3体が今回コラボしていますが、シエルの眼帯とか、セバスチャンのメガネやロザリオなど、キャラクターの特徴をとらえた衣装や小物の再現度がすごいですね~。
セバスチャンのメガネとロザリオはアニメ本編でも苦労したんですよ。このセバスチャンのモフフサから、キャラクターのデザインを忠実に再現するこだわりが伝わってきます。
――ありがとうございます。キャラクターが身に付けている装飾品の質感や動きをアニメで表現するのは難しいんでしょうか?
岡田さん:そうですね。ディテールの再現度が難しいです。アクションシーンでは、キャラの動きに合わせてアクセサリーも揺れます。その動きを描く場合、作画の線を減らすのが一般的ですがいかに減らさずに表現するかが課題のひとつになっていまして。アニメーターさんは、そういったディテールの追求が大変だったと思います。
そうした小物への思い入れがあるので、個人的にはセバスチャンのモフフサがお気に入りですね。
――モフフサはアニメ・漫画・ゲームとコラボした獣化キャラというコンセプトのぬいぐるみシリーズなので、毛足の長い生地にもこだわっています。
岡田さん:確かにモフフサって名前の通り、モフモフフサフサしていて触っていて気持ちいいですね。何の動物とかけ合わせているんですか?
――迎え入れたファンの方が、それぞれ見える動物をイメージして楽しんでもらいたいというコンセプトがありまして、あえて動物モチーフは明確にしていないんです。
岡田さん:なるほど。想像の余地を残してあげるというコンセプトがいいですね!私たちもアニメを制作するにあたって、独自の解釈を入れないように注意しているんです。
原作のマンガが描く世界観や感じとれるニュアンスが重要なので、そこに余計な解釈を加えることは無粋だと思っています。
――モフフサのこだわりを感じてもらえてよかったです!最後にファンの方へ向けてメッセージをお願い致します。
岡田さん:「緑の魔女編」は、ダークファンタジー色が濃く、前シリーズと雰囲気がガラリと変わり、見どころの多いストーリーとなっています。昨年の『寄宿学校編』から見ていただいた方はもちろん、今回初めてご覧になるという人も新鮮な気持ちで楽しめると思いますので、ぜひ『黒執事 -緑の魔女編-』をよろしくお願いいたします。
販売サイト イタテリ屋
ご予約はこちらのEC、もしくは全国のアニメイト(一部店舗除く)で受け付けております。
■アニメ『黒執事 -緑の魔女編-』放送情報
毎週土曜日各局にて放送中!
TOKYO MX、BS11、群馬テレビ、とちぎテレビ:毎週土曜 23:30~放送中
MBS:毎週土曜27:08~放送中
ABEMA(地上波同時)ほか各配信サイトでも配信中!
https://www.kuroshitsuji.tv/emeraldwitch/#onair
【STAFF】
原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)/監督:岡田堅二朗/シリーズ構成:吉野弘幸/キャラクターデザイン:清水祐実/サブキャラクターデザイン:髙田 晃/総作画監督: 清水祐実・髙田 晃・清水裕輔・猪口美緒・寒川 歩/色彩設計:横田明日香/美術設定:伊良波理沙(KUSANAGI)/美術監督:根本邦明(KUSANAGI)/テクニカルディレクター:佐久間悠也/撮影監督:金森つばさ・本倉悠介/CGディレクター:伊藤達弘/編集:小口理菜/音楽:川﨑 龍/音響監督:明田川 仁/制作:CloverWorks
【CAST】
セバスチャン・ミカエリス:小野大輔/シエル・ファントムハイヴ:坂本真綾/ジークリンデ・サリヴァン:釘宮理恵/ヴォルフラム・ゲルツァー:小林親弘/フィニアン:梶 裕貴/メイリン:加藤英美里/バルドロイ:東地宏樹/スネーク:寺島拓篤/タナカ:麦人
© Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Black Butler